『銀と金』〜 森田の離脱、そして、再会への希求!

休みが長いと飽きる… なんて贅沢なことをのたまっている今日この頃、皆様いかがお過ごしですか。
昨日GW映画に行列した疲れのせいか、今日は一日、おうちで、ぐね…ぐね…しながら『銀と金』を読んでいました。
あああ、誠京麻雀編は本当に面白い。
クライマックスで、森田が銀さんに対して敬語を失うとこがあるじゃない。あすこが、本当に最高だと思います。そして、誠京麻雀の締めのくだりを読んでいると、森田が銀さんから離れていってしまったわけがよく分かる。


あの「中」2牌隠し持ちについて、森田は、「銀さんの手の中で踊らされていただけのような感じがする」と…。
銀さんは鋭利すぎて、あまりにも鋭敏すぎて、その鋭さは、敵のみならず、味方に対しても毒になってしまう。無心に銀さんを信じていられるうちはいいけれど、ちょっとでも「知恵」がついてしまうと、少しでも疑いが入り込んでしまうと、もう、銀さんのやることを、「そのまま」には受け取れなくなってしまうんじゃないかと。銀さんの手際が鮮やかなら鮮やかなほど、自分が、銀さんに懸けていればいるほど、「あっ」と裏切られた時の気持が、だんだんと転じて、じわじわと、「疑い」の雲が、信頼を侵していくんだ。


だからあの時の森田の、「本当にそう思ってる…?」というセリフはとても切実で、私は、あすこを読むたびに泣きたくなってしまうのだった。
銀さんは「本当にそう思ってる」って言ってくれたけど。銀さんは、ああ言ってくれたけど。 …森田の中で、そんな疑念と打消しのループが、どんどん大きくなっていったことでしょう。
そして、銀さんは、銀さんは… きっと、その可能性を、全然考えていない!!
そこが、銀さんの、「銀さん」たる由縁というか人間の特質というか。赤木しげにもちょっと通じるとこがあると思うんですが、基本的に、ちょっと、どっかおかしいんだよね。でもそれが「人間」を感じさせるトコで、すごく魅力的。でも、困ったところで…!
銀さん、あんなに頭のいい人なのに、森田に関してはまさに「全幅の信頼」で、森田がそんな疑念に入り込んでいっちゃうなんてことを、微塵も、考えてない。だって自分は、本気に、ほんとに、森田に「まかせて」いるから。で、森田にもそれが、まっすぐ伝わってると思っているから。いくら、一見森田がバカを見た格好になったって。その「真意」は森田に伝わってるって信じてる。なぜなら、自分が、まぎれもなく森田を信じてるから。
ああ、銀王の愛は、まさにキング・サイズなのだった。がっ、それが、ダメっ…!(泣)
ちょっとこう、ザル…? って思えるくらいの、無心な信頼が、むしろアダになってしまった。
やっぱり、銀さんはどこかで、森田の「知恵」とか「自我」みたいなものを見くびっていたんだろうし、森田は森田で、銀さんから来るその丸投げ的な「信頼」を、そのままに受け止められるほど、きっと、大きくはなかったと。自分自身の足りなさばかりが目に付くような、そんな状況の中で、銀さんからくるものを「そのまま」に解釈できるほどの自信など、きっと、持つことができなかった。そして、銀さんのいろんな振舞いが、疑惑と不安とに拍車をかけていった。
それがずっとずっと積み重なっていって、カムイの惨劇から生還したときに、「もう、終わりにしたい」と、森田は、言ってしまったんだと思う。


「悪党と一緒に居ると取り込まれそうだ」っていうセリフは、カムイや蔵前のことを言ってるようで、その実、ただ一人、目の前にいる平井銀二のことを言っている。言い切ったが、そう信じております。あなたと一緒に居ると取り込まれそうだ。自分が自分でなくなっていきそうだ。銀さんは、森田のその言葉を聞いたとき、自分のことを言ってることに気づいたのか、気づかなかったのか。でも、その瞬間気づかなかったとしても、後になって気がつき、しみじみと思いを致したと思う。


巨大な光の側にいすぎると、自分自身の放つ光が分からない。
森田はそれが嫌で、自分が分からなくなり、そもそも、自分がそんなに「光って」いるのかどうかすら分からなくなり、離れたい、と、結論したんだと思う。
だけど、森田が大きな恒星であることには疑いがないし、あの銀王から「離れたい」と思って実際に離れていったということからも、森田の強い自我、矯められない心の様が、現れていると思う。
一度離れることは、森田と銀王にとって、必要不可欠なことだったはず。
だから、こうやって一度離れたんだから、もう一度「再会」したって、いいんじゃない!??  というのが、私の、せつなる叫びであります。
なんのために、別れたの?
それは、もう一度、再会するためじゃあないんですか?
せっかく「別れ」を経たのだから、これはもう、是が非でも再会していただかないと。何のために別れたんだか分からない。
どう見ても、この別れは、「再会」への布石、必要なステップです。二人が、もう一度出会わないと、究極、『銀と金』は完成しない!


ですから、頼むから福本先生、続編を書いてくださいと… 伏してお願いしたい思いです。
あの「アルカサル」(著:青池保子先生/掲載誌廃刊で連載が中断していた)だって、今、完結編が発表されているのですから。可能性はきっとゼロじゃないって信じたい。(ああもう、本当、先生にお手紙を書こうかな…!)
ちなみに、『銀と金』続編に関しては、森田と銀さんの新しい立ち位置について、さまざまの希望や推測が飛び交っているわけですが。(今度は敵対関係…などなど)
わたくし一個人としましては、
銀さんが今度こそツキに見放され、絶体絶命の窮地に陥り、破滅を覚悟した極限的ピンチの状況で、夢にも思わなかった相手――成長し、いつの間にか(海外とかで)大きくなっていた森田が、すっ、と、その手を差し伸べると。
そんな「再会」を、願ってやみません。
その時こそ言おう、I NEED YOU と!!!!!


そして今度こそ森田は、銀王の後継者となってその意志を継ぐと。
なんだったら、銀さんの死のきわに現れるっていうのでもいい。それもいい。再会は叶ったが、時遅く、銀王はまさにその生涯を… (悲しいじゃん!号泣!!)
本当、『銀と金』が、福本作品で一番好きだっていう話なんですよ… おおお…
本気に、『銀と金』続編が、見たくて… 見たくて… 見たくて…!(←アニメいわお)
日々、じた…!じた…! としているのです。
今のカイジの「賭博堕天録」が終わったら、『銀と金』の続編を、ぜひ書いてほしい。
そして、願わくばアニメに…! と、野望を燃え上がらせる、ゴールデンウィークでした。