海燕エピソード

今日もまたしてもブリーチ☆

えー、こんなに騒ぎまくってハマリの様相を呈しているわけですが、しかし。
その実、「漫画・ブリーチ」の言っていることが、全っ然、分からなかったりもするんです。
さっきも、買ってきた16巻読みつつ、「わけわかんねえブリーチ…!」とか思わず呟いちゃった☆
なんつかこう、「こうだ!」って主張してる事柄に、全然、ついてけないことがあるのよね。反対・賛成とかいうより、「ぽかーん…」みたいな。


その最たるものが、重要エピソードであると思われる、「志波海燕の死」のエピソード。
これは、ごく初期の段階で(3巻くらい?)、
「一護と、母親の仇であるホロウとの戦い」の際、ルキア追想という形でその片鱗が登場。「ルキアと一護が抱える共通項」ということで、通奏低音として実に大きな意味のあるエピソードなわけです。


一護は、

・自分の不用意さが原因で、自分を庇おうとした母親が犠牲になり死んでしまった。
・幸せそのものだった家族から、自分が母親を奪ってしまったと認識。
・そのことでずっと自分の事を責めている。

という事柄をずっと秘め持っており、その思いが、「母を殺したホロウと戦って倒す」ことである種克服され、ひとつの決着を見る、というのが序盤の山場。
で、その、一護とホロウとの闘いが、「誇りを守るための戦い」と称せられているわけですね。
ルキアは、劣勢の一護を見守りつつ、加勢に入りたくなるものの、「戦いには命を守るための戦いと誇りを守るための戦いがある」「誇りを守るための戦いに割って入ってはいけない」という何某(ていうか、この後姿がマイラブ・浮竹十四郎だったとは…!)の言葉を思い出し、必死に自分を押しとどめる。


ここの「誇りを守るための戦い」というフレーズで既に「んー??」となっていたわけだが、「一護による、過去の傷の克服」が主眼になっていたので、そこはまあ…「つまり、タイマンに手を出すなってことなんだろ?」と捉えてスルーしていたわけですよ。吸収しかねるフレーズながらも。


しかし、これが、後で、クローズアップされて再登場。
それが、16巻、ルキア救出編も佳境で挟み込まれる回想、「海燕エピソード」。
これがもうね、ほんと、本っ当に、謎。
その内訳は

ルキアが慕っていた十三番隊の副隊長・海燕の妻が、あるホロウに殺されてしまう。
海燕は仇を討つべく、浮竹・ルキアの同道のもと、単身ホロウの巣に向かう。
・ホロウは意外な能力を秘めており、海燕が苦戦。
・助けに入ろうとするルキア、浮竹に押しとどめられる。

で、この闘いがまた、「誇りを守るための戦い」と称される。
「加勢に入れば奴の命は助かるだろう、だが、それで奴の誇りはどうなる?」みたいな論が展開され、ルキアはそれに心をうたれるわけだが、しかし、そんなことを言っている間に海燕の体はホロウに乗っ取られてしまうわけですね。
霊体と霊体の融合で、分離不可能に結びついたホロウと海燕。もう、彼は海燕じゃない…!

ルキアに、「逃げろ!」と叫ぶ浮竹。脱兎の如く駆け出すルキア
・一旦は逃げ去ったものの、海燕を助けるべく、駆け戻ってくるルキア
・応戦する浮竹は発作で吐血、隙をついて、ルキアに襲い掛かるホロウ。
・浮竹の「殺せ!」の声の元、愛する海燕に刃を突き立てるルキア

おお、ブリーチって結構重いのね… という凄惨な展開なわけだが、ここで、最後海燕海燕に戻り、「一対一で戦わせてくれてありがとう」みたいなことを言って、充足して絶命するわけですが。


これが、どうにも「……」でありまして。
「タイマンに手を出さない」これはジャンプ漫画、バトル漫画の基本中の基本で、それはいいんですよ。異論なし。むしろ、サシで戦うのは想定してた。
だけど、「誇りを守るための戦い」の、異様なまでのクロース・アップがなんとも辟易。
一護の戦いのときは、「一護の人生のために必要なプロセス」という流れだったから飲み込めたけど、おそらく、作品としての精神に適うものとして描かれているこの海燕のエピソードに関しては、どうにも無言になってしまうのだった。「の、飲み込めない…!」みたいな。


悲愴美というか、「海燕の戦い→死」を認める、プラスとする筆致でここは描かれていると思うんだけど、どうみても、華々しい自滅に見えちゃう。
このエピソードは、「それをきっかけにルキアが負い目を背負う」→「だから、自分は一護たちに助けてもらう価値がないと思っている」というふうに後に波及していって、実に大きな存在を占め続ける(ていうか本槍?)出来事なわけですが、それそのものが「?」なので、後、ずーっと、このネタが持ち出されるたびに辛くなってくるわけですね。


海燕は最後、ルキアちゃんに「ありがとう」と「ごめんな」を言って死んでいくわけですが、ルキアは、

・自分が最初に逃げ出したのはただただ怖くなったから
・自分がまた戻ったのは海燕を見捨てるのが怖かったから
・自分が海燕を殺したのは、彼を見ていることに耐えられなくなったから
・だから、自分が「助けた」のは自分だけで、そんな自分はとても醜い。
・だから、助けてもらう価値がない。

とか考え、心を痛めて、ひたすらシュンとなっていると。


えとー。なんかすごい「厨」ぽい論法だなあって… 思うのは私だけなのかっ?
ルキアが悪いってことじゃなくって、こういう展開、話運び、キャラの思考の持って行き方、は、どうなんですか? と。
なんかサー、どう考えても、まずいのは海燕じゃん? ルキアしょうがないじゃん。むしろ頑張ったよ。
ルキアがそう考えるに至っている」というのは、いいのよ。キャラの個性としては納得できる。だけど、それを、「いや、そうでもないでしょ?」と、相対化する視線なり価値観というのが、皆無なわけよね。それが「絶対」として描かれてるけど、すごい無理あると思うし、
しかも、それを、「ルキアが、処刑に対して始終従順な理由」の裏づけにしているあたり、なんか、ものすごい無理ある。


これが、単に「思慕を寄せていた先輩がホロウに乗っ取られ」「やむなく自分が殺した」「それで自分のことを責めている」っていうだけのエピソードだったら、「ルキアちゃん…!そんな過去が…!」で済むんだけれど、「誇りを守るための戦い」とかなんとか言い出すから…
その主張が既に苦しい上に、
だいたい、この海燕エピソード、持って行き方がなんかもう、苦しいもん!
ていうか、ことごとくヘン。
一護と、母の仇のホロウとの戦い、という先のエピソードとは事情も違い、海燕は護廷という軍隊の一員なわけよね。しかも副隊長。
「詳細を調べて、二日後に部隊を出す」という上の決定に背いて海燕たちは単身仇を討ちに行くわけだが、それって少なくとも命令違反だし結構な出来事なはずなのに、なにか、サラッ…と行ってるわけですよ。
つか、ここの、浮竹隊長さあ…(脱力)
海燕の気持を汲んで、ホロウの居場所を教え、一対一で戦わせてあげる」
という、一見、味な計らいのように描き出されてはいるものの…!
そこはやっぱ、止めるところじゃん。責任者としては。
ほんと、浮竹隊長なんか、ハタから見てると「この期に乗じて、海燕を葬り去ろうとする黒幕」にしか見えないわけだよ…!
普通だったら、「こいつ、絶対悪役だな…!?」というね。悪役設定で読んでみると、あら不思議、かえって、すんなり腑に落ちたりなんかして(笑)。でも、お話的には「絶対、そんな可能性はありえない」という場面だからこそ、そこが、困ったトコだっつう話なんですよね。
ここは浮竹というキャラ自体の問題というよりも、むしろ、作家の問題、作品としての思想の問題で、浮竹がルキアを制する大ゴマなどは、「一対一の闘いが続行します」という展開のフラグメントとして読むが吉。コマの中身は意訳・超訳で… むしろ、各自のコラで…! というぐらい、こっちの「え?」がことごとく置き去りになっていき、気づけば、海燕が死んじゃっているという。
ああ、なんか、ルキアがものすごく可哀相。
こんなんで、これを「気に病んで自分だけ責める」ていう流れになるなんて、ほんと、これでいいんかい。どうなんかい。


この海燕エピソード、少なくとも、
・隊長が、海燕にあっさりホロウの居場所を教えちゃう。
・劣勢の海燕に手を貸さない理由を説明するセリフが大づかみ過ぎ。(ていうか、ズレて…?)
この二つだけでも、なんとかならないとどうも苦しい。
あと、「ん?」と思ったのが、海燕が「何よりも自分の誇りのために戦っている」というとこね。
「ホロウに、妻を奪われた自分の誇り」
妻がホロウに殺されると、自分の誇りが傷つけられる。言いたいことはなんとなーく伝わってはくるけど、どうにも言い切れていない感じ。
「大事なものを殺される」→「誇り」の間に飛躍があって、その溝を埋めてから「誇り」にいかないと、こっちはポカン… としちゃうし。
仮に「誇り」を「気持」に変えるだけでも、随分違う気がするんですけどね。


ほんと、もうちょっとここの「海燕エピソード」が吸収可能なら良かったのになあ… と思うことしきりだ。
これ、「なかったことにする」には、あまりにもでかすぎるんだよな…
浮竹十四郎史としても相当大きな出来事だし。キャラの行動というよりは、多分にブリーチ則による行動なだけに(あと、展開のための)、キャラのこととしてまともに捉えるとなると、きつい。ていうか、破綻してる! ああ、すごく今、なかったことにしたい。


ところで、この惨事の後、浮竹隊長は空鶴(海燕の妹)の家に謝りに行って、手をついて頭を下げたんだと思いますね。そうだそうだ。きっとそうだ。それはそれで燃える次第であります。
ああ隊長…!
というか、これだけの惨事になって隊長が罷免にならないソウル・ソサエティってのは一体どういう団体なんだろうか。ルキアちゃんの処刑のときも、「えっ…刑重すぎじゃん?」って皆思っていたにもかかわらず、隊長たち、あっさり死刑に列席してるし。がんばってたのは十三と八と恋次ぐらいですよ。どうなっとるんじゃ。読めば読むほど、恐るべき武闘派集団のようです。不透明な事情で下位構成員が処刑されても、わりかし、平気。部下を人間爆弾にして破裂させても(※涅マユリの所業)、お咎め、無し。滅却師への生体実験、黙認。どんな社会だ、ここは…!!!
だんだん怖くなってきました☆