今週の「ONE PIECE」感想――「ONE PIECE」≒ 奇跡



(※ネタバレしています。未読の方、コミックス派の方はご注意ください)










最近ワンピースが面白くてふるえながら読んでいましたが、
今週・・・・・・!!!!!!
キすぎて、窒息したわ!


常々、「尾田は人間じゃない。ほんとうに憎い。ずるい」と思いながら読んでいるのですが、(無論讃辞よ)
今週は、「尾田!!!!」と叫ぶ余力すら霧消した。
「もと奴隷設定」は、ずるいよ!
反 則 でしょ!
ほんともう、ねえさまが「もう誰にも支配されとうない!」って泣きながら言ったときは…
私も一緒に「アアアアアア…!」(←声なき声)ってなりました。
マジで、呼吸器が、衝撃でふさがれたから。息、「ウふっ・・・!」ってなりましたから。どうしてくれるの。
尾田って、尾田って、すごいな。 (改めて)


さらにですね、もちろんワンピ本編そのものが面白いんですけど、
「もと奴隷設定」はですね、私の、眠れるDNAを呼び起こすんですよ。
心の副音声が叫ぶの。「ムクロ様だ…!」と!!!


あーもう太古の記憶(笑)が呼び覚まされて、どうにかなりそうになった。
そのエリアは…! 幽白、とくに、ムクロ様エリアは、危険!
ムクロ様そのものだけでも軽く飛びそうな感じなのに、ムクロ→飛影とか連想されるわけで、
「この半身は俺の誇りだ」とかなんとかああもうストップ! と、ひとり身悶えました。


そんなワンピース。毎号ずるすぎる。おもしろすぎます。
どうも、ポーネグリフとバスター・コールのあたりから、尾田は、政治批判や、世界情勢批判のようなもの、いわば「現在」にコミットしようとしてきているな、と思っていたけど、今の話はさらに「人身売買」「差別」「支配」といった要素がはいってきて、さらに、そのへんが濃くなってきていますね。
人間競売のあたりを読んだときは、「お、尾田が、富樫寄りの世界に…!」といささか震えましたが。


ロビン救出のエピソードの時も、「世界政府に、たった一人の人間が叶うわけがない!」という言葉が大文字で描かれて、でも、尾田の主張は、それに対する巨大なアンチテーゼなわけですよね。「世界の都合」よりも、一個の人間の命、その強い意志こそ、優先しうるものだと。
いまどき、そのあたりを堂々と書いている作家はそういないので、私はワンピースが何を描き出すのかとても楽しみです。尾田が、どんな主張を展開してくれるのかも含めて。
だいたい、そのあたりに行き出すと変なことになってしまう作家もいるけど、尾田の、「あくまでも『多数』に届けようとする」その姿勢を、震えつつも信頼しています。(そこが、尾田と富樫の大きな相違かもしれない)


尾田栄一郎という作家はデビュー後一貫して連載「ワンピース」を描き続けているわけで(十年あまりも!)、普通なら作品が痩せたり、惰性になりそうな規模感(商業的意味合いも含めて)・長期間で描き続けているのに、一向に「ワンピース」はしぼんでこない。
その時々、描きたいものを詰め込んで、遊んで、その熱意が全然切れることがない。(ご本人の実情は知らないけど、漫画が放つ熱は途切れていないと思う。) それは、稀有なことだと思う。
一人の大人が、そして巨大な作家が、「少年もの」を書き続けながら、そこに現代とクロスするテーマ、「単なる、子供向けの口当たりのいい話」ではないものを描いていくことができる、それは、素晴らしいことだと思う。それができずに作品として「死んで」いった話がどんなに多いことか。そんなもの受けない、と言われて、熱を抜かれていった漫画のどんなに多いことか。でも、本当は、読者は、「大人が、子供のところに下りてきて書いてあげた話」じゃなくて、「大人が、大人の考えを、子供に伝えるべく真面目に織り上げた話」が読みたいんじゃないだろうか。私はそれが読みたい。だから、「ワンピース」は本当に面白いと思う。
尾田の才能が編集部にそれを許させたのか、それとも、編集部の考え方もまた変わってきているのか、それは分からない。だけども、「ワンピース」がこの世にあること、連載が続き、発展し続けていること自体が、これからの漫画の可能性そのものに見える。そのことに皆、無意識ではなんとなく気がついていて、だから心がこんなに昂揚するのではないだろうか?
進化する歴史そのものに立ち会えたことを心から幸福に思う。
ONE PIECE」という奇跡を、これからも楽しみ続けたいと思う。身悶えながら!